
西部ネパール、ムスタン、カグベニ地域の地質
P.D.ウラク(トリブバン大学地質学教室)
訳:小滝篤夫
は じ め に
ネパールヒマラヤ(東はMechi川、西はMahakali川の間800kmにわたる<訳注>いずれもインドとの国境にある川)はヒマラヤ弧(東はBurma,西はBalukistan<パキスタン西部の地域>間2500kmにわたる<訳注>日本の文献では東はブラマプトラ川、西はインダス川とされる)の中央部にある。ヒマラヤは南から北に向かって、インド・ガンジス平原(テライ)、亜ヒマラヤ(シワリク層)、低(レッサー)ヒマラヤ、高ヒマラヤ、チベット・テチスヒマラヤに区分される。
チベット・テチスヒマラヤ
――――南チベットデタッチメント(低角)断層系(STDFS)――――
高ヒマラヤ
――――主中央衝上断層(MCT)――――
低ヒマラヤ
――――主境界衝上断層(MBT)――――
亜ヒマラヤ(シワリク層)
――――前縁衝上断層(FCTorMFT)――――
インド・ガンジス平原(テライ)
ネパールヒマラヤもヒマラヤの区分と同じように区分される。また、ネパールヒマラヤは、主な河川によって東部、中部、西部、極西部に区分される。
インド・ガンジス平原(テライ)
ネパールヒマラヤの南縁はインド・ガンジス平原に代表され、北の前縁衝上断層によって亜ヒマラヤと区分される。高度は100〜200mで更新世(100万年前より新しい)から完新世の地層からなる。
亜ヒマラヤ(シワリク層)
北は主境界衝上断層(MBT)、南は前縁衝上断層(MCT)で区分される。ネパールヒマラヤの広大な前縁堆積盆で形成されたシワリク層の岩石(泥岩、砂岩、礫岩)は中期中新世(1600万年前)から更新世(100万年前)の間に堆積した。
低ヒマラヤ
北の主中央衝上断層(MCT)と南の主境界衝上断層(MBT)の間に分布する。弱変成した堆積岩(粘板岩、千枚岩、片岩、片麻岩、珪岩、石灰岩、苦灰岩)から構成され、先カンブリア時代(22億年)から初期中新世(2200万年以前)の年代にわたる。
高ヒマラヤ
主中央衝上断層(MCT)と南チベット分岐断層系(STDFS)の間の岩石がこれに相当する。これらの岩石は、高結晶質岩とかチベットスラブと呼ばれ、先カンブリア時代(22億年以上前)の結晶質岩から構成される。
チベット-テチスヒマラヤ
高ヒマラヤの上位に位置する。頁岩、石灰岩、砂岩などの堆積岩が普通であり、年代はカンブリア紀(5億7000万年以降)から白亜紀(2億3500万年―?Kotaki)にわたる。層序とその性質はマナンとドルパのタコーラ柱状図からわかる。エベレスト、マナスル、アンナプルナ、サイパルなどの高峰はチベット・テチスヒマラヤからつくられている。
カグベニ地域は西部ネパールのチベット・テチスヒマラヤからなる。
ムスタン、カグベニ地域の地質
カグベニ地域は国の北部、ネパールヒマラヤのテチス帯に位置している。この地域は空路ポカラからジョムソンへ、徒歩でベニからカグベニへ行くことが出来る。頭足類、斧足類および植物の豊富な化石相がカグベニ地域一帯から報告されてきた。
カグベニ地域のジュラ紀から白亜紀にかけての堆積層は、下位から順に、ジョムソン石灰岩、ラマチェレ累層、シャリグラム累層およびカグベニ累層に区分される。(図5地質柱状図)
ジョムソン石灰岩
この累層はジョムソン(ムスタン地域の中心地)村からつけられ、ムクチナート、ジョムソン空港およびジョムソン近辺のカリガンダキ川右岸一帯に分布している。
ジョムソン石灰岩は、まれに頁岩と砂岩の層(2%)を伴う300mの厚い層状の灰色〜暗灰色の石灰岩(98%)からなる。
化石:Nuticulina sp.(有孔虫類)、Agropecten sp. Pseudolimae sp.(二枚貝類)の化石が報告されている。
ラマチェレ累層
この名称は二枚貝の豊富な石灰質の地層に由来する。この累層は、バグン村、ルプラ川、ルプラ川からエクレバッティにかけてのカリガンダキ川左岸によく発達している。
この累層は灰色の頁岩と褐灰色の貝化石の豊富な石灰岩が互層をなし、厚さ240mである。
この累層は化石が豊富で、アンモナイト、斧足類、腕足類とベレムナイトのいくつかの種が報告されている。
アンモナイト:Macrocephalites formosus、Lunuloceras
べレムナイト:Belemmnopsis、Hibolites
腕足類:Rhynchonella curvivarians、logenalis
斧足類:Trigonia、Ostrea、Graphya
シャリグラム累層
この名前はヒンドゥ教徒の崇拝の対象となる団塊状の石に由来する。この累層はカグベニ、ムクチナート、カグベニ川の上流一帯に広く分布する。
この層群は団塊状の灰色の頁岩と上部は層状の砂岩からなる。団塊は円礫から亜円礫状でち密、アンモナイトを含む。層厚は約350mである。
Partshiceras sp.、Peltoceras、Proniceras、Katroliceras、Corongoceras sp.などのアンモナイトや有孔虫類が報告されている。
カグベニ累層
この累層の名前はカリガンダキ川左岸のカグベニ村に由来し、キンガ―、カグベニ、エクレバッティ北方、アンダ川とカグベニの北西方に分布する。
この累層は緑灰色砂岩と暗灰色頁岩の互層からなり200mの層厚である。砂岩中には砂岩礫、リップルマーク、斜交層理、樹幹の化石がよく保存されている。頁岩中には植物化石がよく保存されている。
植物化石:Nilsonia、Pullophyllum、Zamite sp.
斧足類:Pecten
ムディン累層
この名前はカグベニ村北西にあるムディン村に由来する。この累層はムディン、カグベニ、またカリガンダキ川右岸によく露出する。
この累層は緑灰色砂岩と灰色頁岩が同じような比率で互層をなし、層厚235mである。アンモナイトと有孔虫類が報告されている。
アンモナイト:Aconeceras、Chelpceras、Cheleniceras、Haplophylloceras、
Deshayesite sp.
有孔虫類:Globigerina
斧足類:Inoceramus sp.
以上 戻る